そろそろハルデックスカップリングについて語るときが来たようだ。

っとゆ〜わけで、ひさびさにハルデックスカップリングについて語ってみたいと思う。そのキッカケは、AWD機構にハルデックスカップリングを採用する、「アウディ TT RS クーペ」が先日発売になったこと。また、最近、発表された「日産ジューク」が採用するAWD機構の「ALL MODE 4×4-i」が、ハルデックスカップリングに似ていると思ったこと、などである。
そして、

前回この記事を書いてから、すでに丸1年以上が経過しているわけだが、ハルデックスカップリングについてのWeb上の日本語の資料が今なお少ないと感じるせいもある。何しろ日本語版のWikipediaにさえ、まだその項目が登場していない。*1アウディジャパン株式会社はハルデックスカップリングの存在について、広く喧伝すべきだと思うのだが。いや、それはむしろハルデックス社がやるべきことか? とにかく、しがない技術ヲタの習性として、ついつい日記でAWD車の最新技術動向を語らずにはいられないのだった。
まず、よくあるアウディ車の「クワトロ(quattro)」システムについての誤解は、センターデフに機械式のトルセン・デフを採用した、前後駆動力配分50:50の、いわゆるフルタイムAWDを指すというもの。これは狭義では間違ってないのだが、実際にはアウディAWD仕様の全アウディ車にこの名称を使っているため、FFベースAWD車両向けにハルデックスカップリングを採用したトルクスプリット型AWDである、アウディTTのAWDモデルなども含まれるのである。なお、アウディTTをフルタイムAWDと呼ぶことについての異論は前回の記事に述べた通りで、フルタイムAWDの定義にもよるところなのだが、アウディTTのAWDモデルがセンターデフを持たないという点については間違い無い。
ところが最近になって、

こちらの記事にモータージャーナリストの斎藤聡氏が、第4世代のハルデックスカップリングを採用したAWD車のインプレッションを書かれているのを発見し、非常に興味深いと思った。曰く、


第4世代のハルデックスカップリングは50対50のトルセン型クワトロシステム
の動きにかなり近づけるように制御ロジックを組んでおり、スタンバイ4WD的な
後輪への駆動力伝達の遅れや、それによるアンダーステアがほとんど見当たらない
ものになっていると感じました。
とのこと。どうやら、ハルデックスカップリングは熟成が進み、自分が文献から感じた、「95:5のトルク配分を基本とする、通常時はほとんどFF仕様のな〜んちゃってAWD」というイメージはもはや過去のものらしい。実際に走ってみてこれほどの出来なのであれば、センターデフを持たずしてフルタイムAWDを名乗ることに、違和感を覚える必要はないと感じた次第。
あるいはセンターデフを持たないことで、トルク容量的な制約があるのかと思いきや、冒頭で触れた「TT RS クーペ」は最大トルク45.9kg-mとのこと。ここまでのスポーツモデルに採用されるとなると、耐久性も問題は無いのだろう。またハルデックスカップリングではないが、同じくセンターデフを持たないAWDである、「日産ジューク」の「ALL MODE 4×4-i」ではトルクベクタリングによりヨーレート制御まで行うという。いまセンターデフレスAWDが熱い(かも知れない)。

*1:ならお前が書け。>ワシ