NSXとは何だったのか。

という題名で記事が書けるほどの資格は自分には無いのだけど。阿梨師匠のおかげで一度はハンドルを握ったこともあるし*1、自分のホンダに対する思いをまとめてみたい気分なので、ちょっとだけ書いてみるテスト。

HONDA NSX―ホンダの夢を今こそ手に入れる (NEKO MOOK 1253 レジェンダリー・ジェイズ 1)

HONDA NSX―ホンダの夢を今こそ手に入れる (NEKO MOOK 1253 レジェンダリー・ジェイズ 1)

↑キッカケはこの本だった。阿梨師匠のコメント*2を参考に、P13〜とP16〜を立ち読みしたけど、正直意味がよく分からなかった。で、自分が所有する車種以外についての本(特にムックの類)を買うべからず、という自らに科した禁忌*3を犯して結局この本を買ってしまった。
実のところ、自分はNSXに特別な思い入れがあるわけではなく、もしホンダ車にそれがあるとすれば、かつて9年間乗ったEGシビックについてのみだろう。NSXはキライな車ではないけれども、新車で買うには価格帯が高すぎるし、2シーターゆえに実用性も無いため、自分が欲しいと思える車の範疇には入ってなかった。つまりこれまで自分の物欲の対象になったことは無い。だから、NSXのムックを買うのもこれが初めてのハズだ。かつて、RX-7FD3S、以下、FD)に憧れて、ずっと欲しいと思っていた時期があり、そのためFDについての本や雑誌は山ほど買った。ここで前述の禁忌が意味をなしていないと思われるかも知れないが、この禁忌を科すようになったのは、最近になってからであり、正確にはランエボ9MRを買ってからである。その代わり、と言っては何だが、ランエボについてのムックの類(新刊)はおそらく全て買っている。ちなみに、先日、生産終了が発表された*4S2000についての本も、S2000登場当時にバカみたいに買い漁った記憶がある。あれから10年が経過した今、当時買った本がどこに行ったかは定かではないが、捨てた記憶も無いので、どこか段ボールの角にでも眠っているのではないかと思う。そんなわけで、S2000が終了する今、シビックタイプRをスポーツセダンと解釈するならば、ついにホンダのラインナップからスポーツカーが消えてしまうことになる。いよいよ名実ともにミニバンメーカーホンダの幕開けである。
「ホンダはフェラーリより偉い!」とは「オーバーレブ!」という漫画(フィクション)に登場する、片山愛香のセリフだったと思うけれども。自分はわりと真面目にそれを真実だと信じてきた。原作者の山口かつみの解釈がどうだか自分には分からないけれども、自分なりの解釈でホンダはフェラーリよりも偉いと思う。それは本田宗一郎フェラーリの創業者(エンツォ・フェラーリでしたっけ?)よりも偉いとかの話ではなくて、工業製品としての自動車を生産するメーカーとして、ホンダの方が圧倒的にフェラーリよりもリーズナブルに製品を提供しているから。自動車好きの人にも意外と知られていないと思うのだけど、ホンダの企業理念で「三つの喜び」というのがある。*5すなわち、「創る喜び」「売る喜び」「買う喜び」である。もちろん、創業者の本田宗一郎の言葉なのだけれども。まあ、「創る喜び」と「売る喜び」は良いとして、「買う喜び」って何やねん!? っとそれを知って正直驚いた記憶がある。わりとストレートに物欲を礼賛してると言っても良い。少なくとも、自分はそうとらえた。なので、この考え方を是とするならば、車が製品であり商品である以上、買えてナンボなわけである。ここでホンダジェットASIMOはとても買えないよ! っと思われるかも知れないが、アレはまあコンシューマ製品ではないので置いておく。対してフェラーリはなかなか買えない。もちろん、フェラーリもコンシューマ製品ではないという考え方も一理あるけれども。空を飛んだり足が生えてて走り回ったりしない上に、タイヤが四つついていて地面を走り回る乗り物である以上は、同じ土俵で評価してもバチは当たらないだろう。つまり、フェラーリはハイエンドなコンシューマ製品だ。けっしてフェラーリのビジネスを否定するわけではないけれども、少なくとも一般庶民である自分にとっては、ホンダの方がより身近だし、はるかに「買う喜び」を体現しやすい。需要をあえて満たさないことによって、価値を維持するビジネスモデルも世の中にあって良いとは思うけれども*6、大量生産によってあまねく需要に応えるビジネスモデルの方が、はるかに共感できる。そんな理由で自分は本当に「ホンダはフェラーリより偉い!」と思ってきたわけだ。
さて、90年代以降、そんな「フェラーリよりも偉いホンダ」の象徴的存在だったのが、やはりNSXという車だったハズだ。だからフェラーリよりも安くて、フェラーリよりも速くないといけない。なぜならフェラーリよりも偉いんだもの。でも、現実にニュルのタイムなどを比較して、どちらが速かったかには実のところ自分はあまり興味はない。NSX登場から20年近い歳月が経過し、その間、ニュルのタイムはR35 GT-Rがブッちぎってくれたので、今となってはそこを論じても興醒めな気分なのだった。結局のところ、NSXが何だったのかは、NSXを買って、そして乗って人にしか分からないのかも知れない。それでも、EGシビックに乗っていた自分の視点から見るNSXは、まぎれもなくホンダのトップグレードに位置するフラッグシップカーであり、ホンダがフェラーリと肩を並べられる象徴であった。そして、深夜の都心環状線でさっそうとぼくのEGを追い抜いていく、NSXのテールに灯ったハザードをぼくは強い憧れを持って見送ったことを、生涯忘れることはないのだ。