夏野タンのアンチガラパゴス論。


日本の携帯電話メーカーが技術力で優位に立てる理由はいくつもある。ほとんどすべての
メーカーがPCも作っていること、携帯とPCの融合のトレンドを追い風に使えること
国産携帯でPCと融合してる端末なんてあったっけ?
少なくともそんな端末をワシは見たことがない。あるのだったらぜひ教えて欲しい。これまでに自分が感じた、もっともPCとの親和性が高い端末は、Motorola M1000だ。iPhoneよりもむしろM1000である。なぜなら、iPhoneにはPCのドキュメントファイルをBluetoothで転送して、iPhone側で閲覧する、といった使い方は想定されていない。*1M1000ではそういった使い方が、標準のツール類だけでいとも簡単にできる。また、M1000はPC側のOutlookとの電話帳(住所録)の同期が相互に可能である。しかもBluetooth接続で。確かにドコモの場合、キャリアが提供するPC用のツール(フリー)を使えば、Outlookとの同期も可能であるが、あくまでエクスポートとインポートであって、双方向の同期はできないし、接続もBluetoothではなく、USBケーブルになる。自分がiPhoneを使いながらも、M1000のことがいつまでも忘れられず未練を引きずるのは、この見事なまでのPCとの親和性の高さゆえだ。


ところで、日本の携帯電話メーカーは果たして海外進出したがっているのだろうか? 自分にはとてもそうは思えない。*2自分の目には、別に日本で売ってれば良くね? そう思っているように見える。そして各地域ごとに合わせたローカライズのコストを考えると、そこまでの手間暇をかけて、売り込みたいとは思っていないのではないか。たとえば、日本メーカーが得意とする、AV機器やデジカメ、PCといった製品では、最初から世界共通仕様の製品を一種類作っていれば、それでよい。ところが携帯の場合は、地域ごと、そしてオペレータ毎の独自性もあるし、売り込むにしても何かと大変だ。逆に、NokiaMotorolaなどの世界共通仕様の製品を日本に持ってくるのは、それほど難しくはないだろう。お財布ケータイなど、実現できない機能はバッサリと諦めてしまえば良いのだから。そうやって、海外仕様の携帯が国内では異端扱いされることになるわけだ。iPhoneもまたしかり。


自分が思うに、オペレータ主導の垂直統合モデルで開発された、国産の携帯端末には設計思想が無い。これはオペレータ主導型の致命的な弱点だとも思えるのだが、オペレータが入れたい機能をメーカーにすべて入れさせるから、端末の個性は出ないのである。だから、どのメーカーの機種も機能的には似たり寄ったりになる。せいぜいハイエンドモデルとローエンドモデルの意図された機能の差が生まれる程度のことだ。iPhoneを使ってみて強く感じたのは、機能の足し算では個性は生まれないし、思想は表現し得ない、ということだ。そこにはあえて機能の省略、つまり引き算が必要だ。もっとも、iPhoneはストラップの穴さえなく、引き算が少々行き過ぎた印象はあるけれども。そしてそういった設計思想は、実装を知る開発の現場からしか生まれて来ない。個性的な端末はメーカー主導でなければ作り得ないのである。

*1:iTunesを使った、音楽や動画、写真の同期はお手の物だが、PDFファイルやOfficeドキュメントとなるとこうはいかない。

*2:まあ、SHARPは進出したがっている印象は受けるが。