BMW 116i Sport、ファーストインプレッション。

っとゆ〜わけで、おやぢがE46型320i(以下、320i)を手放して、F20型116i Sport(2012年登録&走行7,000kmの中古、以下116i)に乗り替えたので、超ひさびさに車のインプレを書くよ〜

とりあえず、まだ街乗りで数キロしか乗ってないのだけど。めちゃめちゃ乗りやすい。そして、乗り心地が良い。
320iの純正足回りはどうも自分には合わなかった。というか、どういうセッティング(高速向けor街乗り向け・乗り心地重視orハンドリング重視、等々)なのかイマイチ意図をくみ取れなかったのだけど。116iの足回りは率直に乗り心地が良く、快適で、ハンドリングも良く感じる。

恐らくは乗り心地やハンドリングの良さは、ランフラットタイヤと電動(たぶん)パワステが功を奏してると思われ。パワステはめちゃめちゃ軽い。油圧だとちょっとあり得ない軽さなので電動だと思う。そして、電動パワステにありがちな違和感は特に感じなかった。まあ、まだちょっとしか乗ってないし、車庫入れも1回しかしてないけど。

あと、ミッションは8速(たぶん)ATモデルなのだけど、出だしも軽く車重が軽く感じられ(対320i比)、軽くアクセルを踏み込むだけで必要なトルクが立ち上がる。テンロクの直列4気筒DOHCターボ(ギャレット製タービン)なのだけど、ターボラグも特に感じないし、テンロクとは思えないほどパワーがある。まあ、ターボ付いてるんで当たり前と言えば当たり前だけど。とりあえず、2リッターくらいあるかな、って感じ。

停止状態からの出だしについては、320iの低回転で綺麗につないでいくATが好き(直6のロロロロローっというハミングするようなエンジン音とともに)だったので、それと比べるとさすがに高級感(言葉を変えれば、大人の余裕的な?)は無いけど、アクセルの踏み込み加減は320iよりも少なくて済むように感じた。つまり、エンジンがパワフルというか、車重が軽く感じる。ただ、ATはあまりにスムーズ過ぎて(段数が多すぎて?)、まるでCVTのように感じた。これはあんまり好きじゃ無いかも。

320iと116iを比較すると、車幅がちょっとだけ増えて全長がちょっと短くなってるのだけど。運転したフィーリングとしては、320iがちょっと高級なセダンという感じなのに対して、116iは小気味よく走るコンパクトカーといった感触。街乗りならば、116iの方が快適で取り回しもし易いかも知れない。
直6から直4への乗り替えは、エンジンのフィーリング的にガッカリするかなーっと思ったのだが(おやぢはあまり気にしてないようだが)、低回転だと直4とは思えないくらいスムーズ。さすがに高回転まで回すと4気筒だなーっとは思うけど。とりあえず、ガッカリ感は特になかった。


っと、自分のインプレとしては珍しく、ほとんどべた褒めしてしまったのだけど。

実際、こんなに良いとは思ってなかった。まあ、悪くはないだろうなーっとは思ってたのだけど。以前、乗ったことのある、一世代前の135iクーペ*1の印象はそれほど良くは無かったので、そんなに期待もしていなかったのだった。

それがさすがBMWという出来だったので正直驚いた。以前、レンタカーでインサイトに乗ったときに、あまりに完成度が低くて、本当にガッカリしたのだけど。その時と真逆の感想である。


ただ、自分がここで主張したいのは、116iの出来の良さではなく。*2車というものが本当に変わってしまったんだなーっと実感した事。つまり世代が変わってしまったという事。これは一世代前の135iクーペを乗ったときにはまだ感じなかった。もっとも、135iクーペがMTモデルだったこともあるけれども。

なんというか、自動車というものが、自動車2.0*3になってしまったというか。そういう感想。21世紀になって、まだ空は飛ばないけど、20世紀の車とは明らかに質の違う別ものになったと感じた。そして、ワシは率直にもう付いていけないと思った。

自動車2.0(仮称)についての最初の予感はレンタカーで借りたプリウスだった。これは別ものだと思ったし、すごく違和感を感じた。でも、これはある種の奇形(良い意味で)なんだと思えば、話はそれで済んだ。ところが、今回の116iの感触は正当派なのだった。

つまり、何というか、例えば電動パワステにしてもスロットル(インジェクション)制御技術にしても。バーチャルなものを作り込んで、ドライバーにはリアルと感じさせているわけである。それが例えば、昔のカローラの電動パワステなんかは本当に酷い出来で、これはバーチャルだと認識出来たのだけど。今回の116iはバーチャルな物がリアルに取って代わっていると感じたのだった。

だから、ワシはもう駄目だと思った。駄目なのは車じゃなくて、ワシの方ね。こんな気持ちの悪いものを操って、キモチワルイと感じられないことが本当に気持ち悪い。


話を116iに戻そう。車としての出来は冒頭に書いた通り、ほとんど100点満点だと思う。あとは好みの問題。まあ、まだ街乗りでちょっとしか乗ってないので、これが高速やワインディングに行けば評価がガラっと変わる可能性はあるけれども。

そして、自分がそれでも違和感を感じた(付いていけないと思った)のは、ユーザーインターフェースとしてのやり過ぎ感。ATのシフトノブやナビやオーディオのコントロール。そしてアイドリングストップ。いや、アイドリングストップに付いても、ストップのタイミングや始動のタイミングはケチの付けようが無いくらいよく作り込まれてるのだけど。*4でも、だからこそ余計に自分にはコレじゃ無い感が強まって感じられたのだった。

かつて、自動車黎明期に規定された、ハンドル・アクセル・ブレーキ・クラッチ・シフトノブ、といった基本的なユーザーインターフェースは簡潔で秀逸だったと感じる。アクセルとブレーキの位置が逆の自動車は存在しない。ところが現代においては、ATのマニュアルモードでシフトアップ時にシフトノブを手前に引くのか奥に倒すのかといった基本的な仕様でさえ、統一されていない。

ナビやオーディオを車のシステムとして渾然一体としたいのも理解出来るが、それらのユーザーインターフェースが車そのもののUIと溶け込んだ結果、各々を独立して操作することが難しくなっている。あるいは、それらアクセサリ類をある程度使えない(使い方が分からない)と、自動車本来の運転に集中出来なかったりする。

ユーザーインターフェースについては、単純に慣れの部分も大きいので、一度慣れてしまえば違和感は感じなくなるとは思うが、自分が現代の自動車に感じた絶望感は、つまりあるUIに慣れたとして、他メーカーの別車種に乗ったときに、やはり大きな違和感を感じるであろうことへの予感から来るものだ。

たとえば、この問題はスマートフォンiPhoneAndroid OSのUIに細かい差が無数にあるのと似ている。しかも、同じAndroid OSでもバージョンやメーカーが異なればUIが細かく違っていたりする。


T型フォードの発売から1世紀を越え、自動車はあまりに複雑になり過ぎたんだなーっと思う。あとはトラクションコントロールにしろ、自動アイドリングストップにしろ、それが技術的に可能であれば実装せずにはいられない人間の性のようなものを感じる。燃費を稼ぐためには油圧パワステを廃し、電動パワステの違和感も電子制御を作り込んで克服せずにはいられない。

かつて自分が9年間乗った、EGシビックにはABSさえ付いてなかった。*5さすがにキャブではなくてEFI(PGM-FI)モデルだったけれども。シビックの前に2年間乗った、シャレードはキャブ車だった。今となっては記憶が定かでは無いが、シャレードには恐らくパワステも無かった気がする(車重が軽いので必要無いのもあるけど)。そうやって思い出してみると、特にそれらの装備が付いてなくても、立派に自動車としての機能を果たしていたように思う。ABSが無くても、人間ABSで補っていたし。

今回、多機能で快適装備満載の116iを運転して、その完成度の高さに驚いた。少なくとも街乗りでの出来はほとんど満点だと感じる。しかし、これがおやぢの車ではなくて、自分で所有したいか、という観点で考えると全然そうは思えないのが不思議だった。ユーザーインターフェースはやり過ぎに思えるし、アイドリングストップは気に入らない。かといって、燃費はやっぱり気になるから、きっとアイドリングストップをオフには出来ないであろう、自分が切ない。


自分がいまの愛車のランエボ9MRを買ってからそろそろ3回目の車検(=7年)が来ようとしているけれども。思えば、この車は自分がUIや実装された電子制御技術を許容できる、ギリギリの世代だったと思う。つまり自画自賛的だけれども、20世紀の車の最高傑作の最終進化形だと思う。でも、それでも21世紀の車ではないのだった。*6

ランエボで言えば、9MRのあとはランエボXになった。エボXは名機と呼ばれた4G63とついに決別し、エンジンは新世代の4B11になり、TC-SSTS-AWCといった最新電子制御技術のてんこ盛りだ。聞いた話では、エボXのコンピュータ内では常にシミュレーション上のモデルが走っていて、それとリアルとの差分をセンサーからの入力でリアルタイムで比較してるんだそうだ。これもまさに21世紀の車だと言えよう。実際に自分も運転させてもらったことがある*7けれども、めちゃめちゃ良く出来ている。でも、自分にはやっぱりちとやり過ぎのように思えるのだった。もっとも、9MRのAYCやACDだってやり過ぎ感は高いけど。でも、ここが自分としてはギリギリ許容出来るラインなのだった。*8

しかし、そうすると自分が本当に納得して所有出来る車は、新車としてはもう二度と発売されないかも知れない。そんなことを思うと、やはりいま乗っているランエボ9MRに一生乗り続けるしかない&絶対全損出来ない、という予感が日増しに高まる、そんな今日この頃なのである。

*1:参照→http://d.hatena.ne.jp/tmx/20080412/1207997919

*2:Amazonのアフィリを埋め込めるんなら、もっと褒め称えるのだけど。(ぉぃ

*3:攻殻機動隊2.0」の出来の悪さを思い出してもらえれば助かります。(ぉぃ 参照→http://d.hatena.ne.jp/tmx/20080816/1218898502

*4:気に入らなければ、アイドリングストップ機能そのものをオフにすることも出来るみたいだけど。

*5:ABS付きのグレードもあったみたいだけど。

*6:発売は21世紀(=2006年)だけど。

*7:参照→http://d.hatena.ne.jp/tmx/20081130/1228053091

*8:これらAYCやACDの統合制御を司るものが、つまりS-AWCだと思うんだけど。自分としては自分の身体がそこにコミットしたいという思い。