「かんなぎ」に見る、ヒロイン同居型アニメのステレオタイプとセックスレスの理由。

※以下、アニメ版「かんなぎ」第2話までのネタバレを含みます。

ヒロイン役の戸松遥つながりで言えば、「To LOVEる -とらぶる-」(以下、「To LOVEる」)もそうであるが、このパターンはめちゃめちゃ多い。「To LOVEる」の第1話の感想を書いたときにも言ったけど*1、自分は「To LOVEる」は、「うる星やつら」の21世紀バージョン、いわば焼き直しじゃないかと思っている。*2だって、そのまんまシチュエーションが同じだもの。まあ、作者は意図的にやってるんだと思うけど。そんなわけで、「うる星やつら」以前は分からないけれども。「うる星やつら」以降にはさんざん使い古されたパターンであって、もはやこのタイプの作品は枚挙にいとまがない。

そして、このタイプのハーレム型作品で個人的には不思議で仕方が無いのが、最終話に至るまでヒロインが貞操を守り続けることである。まあ、冒頭に挙げた「To LOVEる」にせよ、「うる星やつら」にせよ、原作の連載が少年コミックなので、性描写は不可という理由は大きいとは思うのだけど。個人的にはそれでもいわゆる「朝チュン」的描写は可能じゃないかと思うのだけど。

ひとまずその議論は置いておいて、さらに不思議なのはこのタイプの作品では金字塔とも言える、「ああっ女神さまっ」である。原作の連載は月刊アフタヌーンなので、青年コミックの部類に入るだろう。対象読者を考えればライトな性描写は可能なハズである。かつては単行本を買って原作を読んでいたのだけど、もはや10年以上、読んでいないので(ベルダンディーと螢一の間が)どこまで進んでいるかは分からない。確か自分が読んでいた、10年ちょっと前までは、まだキスはしていなかったハズである。その後、数年前に友人から「キスはした」という話を聞いた。ところが原作者は二人をキスさせたことを後悔している、という話を同時に聞いたので、おそらく今もそれ以上は進展していないのだろう。

それにしても、こんなに不自然極まりない現象はないだろう。自然の摂理を考えれば、年ごろの健康な男女が一つ屋根根の下に暮らして何もないなどということがあろうハズが無い。それとも、この種のハーレムアニメのヒロインと付き合うことの出来る、主人公はそろいも揃って性的に不能だというのだろうか。まあ、マーフィーの法則流に言ってみれば、『男性がモテる度合いは、その男性自身がエレクト出来る角度に反比例する』というのは、うっかり真実を付いていそうで怖いが。(ぉぃ

話が逸れた。話を「かんなぎ」に戻すと、お約束のように一人暮らしをしている、主人公、御厨仁(みくりやじん)のところに、ナギという名の美少女(神様型魔法少女(ぉぃ)が突然現れる。ちなみに、「うる星やつら」では、主人公の諸星あたるは一人っ子ではあるが両親と暮らしている。最近のハーレム型アニメでは、作中の萌え要素のみが重要視され徹底的な合理化が図られた結果、両親や家族の存在は(妹を除いて)、最初からいないか描写を省略されるケースが多く、「かんなぎ」の場合も例外ではない。まあ、もうその辺の設定や展開は、突っ込みを入れる余地もなく、ハイハイといって受け入れざるを得ないのだけれども。案の定、「かんなぎ」でも仁は、転がり込んできたナギと必然的にいっしょに暮らすことになるわけである。

ただし、ちょっと面白いと思ったのは、第2話で仁がナギのワガママに耐えかねてケンカするシーン。自分の実際の経験を照らし合わせてみても、なかなかリアルな展開だな、っと思った。*3まあ、結局は仁はナギを連れて帰ることになるのだけれども、ナギが仁の家をいったんは飛び出るという描写は、二人の常識ではあり得ない同居に説得力を持たせる材料になると思った。

ところで、以前にも書いたが*4、結局のところあらゆる恋愛には100%終わりがある。いっしょに暮らして、えっちをしたらそれはもう夫婦と同じであり、恋愛の段階は終わりを告げ、次に描くべきは子育ての描写になる。果たして、ベルダンディーと螢一の間に出来た子供が進学して大学を出て一流企業に就職するまでの子育て物語を読みたいか? あるいはベルダンディーと螢一が離婚をめぐって裁判になり、ついに親権を勝ち得なかった螢一は、がっぽりとベルダンディーに慰謝料を取られ月に一度の子供との面会を楽しみにしながら細々と養育費を送り続ける姿を見たいか? *5答えはいずれもNOだろう。つまりは連載を終了させたくない編集部側や作者側の意図以前に、そんなものを読者が望んでいないのである。

だからこそ、恋愛(≒連載)を終わらせないがためにも、いかに不自然であってもいつまでたっても、主人公とヒロインはえっちが出来ないのである。これはビューティフル・ドリーマーにおいて、いつまでたっても学園祭当日が来ないのと同じ理由である。もしその日が来るとすれば、それは終わりの日なのだから。

*1:参照→http://d.hatena.ne.jp/tmx/20080425/1209055233

*2:劣化コピーだけど(ぉぃ

*3:一人暮らしをしてる時に、神様(女神様)が突然現れて同居することになった経験は残念ながらないが、ケンカの内容というか、ケンカに至るまでの経緯がリアルだな、っと。

*4:参照→http://d.hatena.ne.jp/tmx/20080821/1219251424

*5:たとえが極端すぎるから。>ワシ